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肌と心は、とても正直です。例えば人間関係の悩みも肌悩みも、ちょっとスイッチを変えるだけ。自分の心の向きを少しだけ変えるだけで未来は開けていくし、また同時に毎日の保湿ケアの考え方を変えるだけで、眠っていた美しさが目を覚ますこともあるのです。
齋藤薫さん
美容ジャーナリスト/エッセイスト
とても皮肉なことに、人間関係の悩みは、恋愛とよく似ています。否定したい相手に、人はまるで恋でもしているかのように没頭してしまうから。好きな人のことで頭がいっぱいになるのと同じ、逆にネガティブな感情を抱いている人のことも気になって気になって、頭がいっぱいになりがちなのです。もちろんそんなことは全く望んでいないのに。
囗がまえに人と書いて「囚われる」、ある感情に束縛されるという意味ですが、まさにそれ。だから辛いし、不安、心は乱れたまま。そうなるともう間違いなく肌がカサつき、肌荒れし、様々なトラブルが現れがちです。恋をするとキレイになる……誰もが知る法則ですが、言うまでもなく恋愛ホルモンと呼ばれる体内物質の影響もあって、女性ホルモン、エストロゲンの分泌が高まるから。
人間関係で負の感情に囚われている時の肌では、これと全く逆のことが起きていると考えると分かり易いのかもしれません。当然のことながらストレスが生まれ、心の乱れに伴って自律神経の乱れや免疫力の低下などが起こり、肌にも様々な影響をもたらすのです。ちょうど生理前と同じような肌荒れ状態になるとも言われます。ちなみに慢性的にストレスを受け続けるのが肌にはよくないと言われますが、人間関係の悩みは長期化してしまい、尚のこと解決を急がなければ。
そこでまず大切なのは“囚われの心”を1日も早くほどくこと。状況が許す限り、頭の中からその人を追い出すこと。相手の存在が気になっているうちは、嫌い、怖い、あるいは許せないといったネガティブな感情も消えることはありません。だから相手を見ない、関わらない、考えない。自分の心を守り、楽にすることを優先させてほしいのです。
じゃあその相手と日常的に顔を突き合わせなければいけない時はどうするか? 単純に頭の中から追い出すことなどできない場合。それこそ、問題を相手のせいにせず、むしろ自分の問題にして「ひょっとすると自分にも落ち度があるのでは?」とちょっとだけ反省するような心持ちになること。すると不思議なほど清々しい気持ちになれるはずなのです。
“自分のせい”にするなんて、今さんざん取りざたされ、問題になっている自己肯定感をみすみす否定するような提案ではないかと言われるかもしれません。でもこれは自分を否定するものではない、むしろ自分を肯定するためのプロセス。それこそ相手の批判より、自分自身を正して高めようとする意識が、自分の中でふつふつとしていた心の澱みまでを一気に流し去り、どんな人間関係も乗り越えられる、強くてピュアな心が育くまれるはず。一度トライしてみて欲しいのです。ちょっとだけ自分のせいにすると、相手に向けていたネガティブな心もアッという間に消え、なんだか心が洗われるような浄化感が訪れるはずだから。
じゃあ肌の場合はどうなのでしょう。肌悩み自体を何とかしようとあれこれとケアに走るより、いつどこでも潤いを感じられるような、もっと本質的な保湿を行うこと。
つまり“あくまで自分が持っている力で困難を乗り切ろう”と視点を変え、どんな環境でも潤う肌を目指すこと。すると、肌の中を常にキレイな水がさらさら流れるような快感を覚え、肌の中の澱みも潤いが流し去ってれるような清々しさがあるはずなのです。
【格言】
心が乱れている時ほど手が伸びる、
それは深く潤う素晴らしい保湿である証。
人間関係に悩んでいる時、相手の批判より、
まず自らを正そうとすると、心が一気に洗われ救われる
2023年2月13日
齋藤薫さん
美容ジャーナリスト/エッセイスト