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落ち込むことって日常的にたくさんあるし、激しく落ち込むことも誰にだってあるはず。
でも大切なのは、それを何度も何度も引っ張り出して悩まないこと。
そのコツを考えます。
齋藤薫さん
美容ジャーナリスト/エッセイスト
例えば昨日、あなたには“落ち込むようなこと”があったでしょうか? そう言えばあったかもしれないと昨日を振り返った時、仮にネガティブな感情そのものは思い出せても、「でもなんで落ち込んでいたんだっけ? 」と、その原因はもう忘れてしまっていたりしませんか?
つまりそれは、1日で忘れてしまうくらい些細なことだったりする証。人はちょっとしたことで落ち込み、でも割にすぐ立ち直るようなことを日々繰り返しながら生きているのです。
単純に、毎朝出勤途中に会う素敵な人の姿が、今日は見当たらないというだけで少し落ち込むけれど、でもそういうことって次の瞬間には忘れているはず。応援しているスポーツ選手が今日は活躍できなかったというだけで、少し落ち込み、でもやっぱりすぐ忘れてしまう……。
おそらくは、感じた落ち込みをいちいちためていくと、心が重くなりすぎるので、人にはそういうネガティブな記憶をどんどん捨てていくシステムが備わっているからなのかもしれません。確かによく言われるのは、“睡眠”にはそうした記憶の処理機能が備わっていて、不要な記憶を消していくということ。人を慰める時「そんなことは、一晩寝れば忘れてしまうよ」というのはある意味真実なのです。
そうやって知らず知らず心をリセットしながら生きている、人間はとても賢い生き物なのです。
ただどんな人にも、“激しく落ち込むこと”は起きるもの。仕事で大失敗したり、期待が裏切られたり、それこそ大失恋をしてしまったり……。大きな挫折や苦しみ、失望は、やはりどうしても心にクッキリ傷をつけてしまうので、簡単には立ち直れない。傷の深さの分だけ長い時間がかかるわけですが、当然のことながら、なるべく早く立ち直るそのスピード感がストレスを形にしない鍵になるはず。でも問題なのは、そういう重たい感情ほどその後も幾度となく心に湧き上がって、何度も何度も人を落ち込ませることなのです。
例えばこんなことってないでしょうか。お風呂に入った時、ベッドに入った時、思い出したくない負の出来事をわざわざ思い出しては、わざわざ落ち込んでしまうようなこと。電車の中や仕事の休憩時間、ふと心に隙間ができるたびに、いちいち引っ張り出してしまう、だから立ち直りに余計時間がかかってしまうのです。またそれが、ストレスをためる原因になってしまうのは明らか。
過ぎてしまったことを繰り返し悩み続けるのは、幸せな日常に最もふさわしくない悪い癖。それこそ七転び八起き、失敗してもすぐ立ち直ろうとするエネルギーの邪魔をします。逆にネガティブな思考を引っ張り出さない工夫が必要なわけで、それって一体どうしたらいいのでしょう。
不快感や憂鬱など、マイナス方向の状況に見舞われた時、そこから脱出する方法としてよく提案されるのが、軽い瞑想。瞑想といっても難しい話ではなく、単に目を閉じて深呼吸をゆっくり繰り返すだけ。その時、自分の呼吸を意識し鼻を通り抜けていく息だけに集中すると、悪いことを思い出す癖も次第になくなっていくという考え方。憂鬱な気持ちになったら、目を閉じて深呼吸。これで多少とも心が晴れ、落ち込みもきっと減ってくるはずなのです。
そして実は肌のお手入れも、マイナス思考からの脱却という意味で、とても大切な時間になってきます。スキンケアは五感を使って様々な心地よさを感じながら行ってこそ、新たな美しさの可能性も目を覚ますはず。一品一品丁寧になじませたら、目を閉じて香りも楽しみながら、浸透していくのをゆっくり味わうよう心がけてほしいのです。
ともかく意識して、日常生活の中で悪い思考を頭から追い出すような習慣を持った時、結果としていつも前向きな清々しい気持ちでいられるはず。そして落ち込む回数が減るほどに、輝く表情が増えていくという法則も成り立つはずです。
そのためにこそ、”軽い瞑想“や“丁寧に味わう肌のお手入れ”に没頭する時間を増やしてほしいのです。もちろん落ち込む原因そのものが取り除ければベスト。でも同時に、落ち込みからも憂鬱からもその場で自分を救い出す術を知っている、それも一つの美容なのかもしれません。
【格言】
落ち込む回数が減るほどに、輝く表情が増えていく。
だから日常的に、悪い思考を
頭から追い出す方法を知っている人こそが、美しくなる
2024年7月8日
齋藤薫さん
美容ジャーナリスト/エッセイスト