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涼しげな印象の人って理屈抜きに美しい。でも本当に理屈抜き?そこにどんな理由があるのかきっと知りたいはず。今回は美しさと温度感の関係について解き明かしていきます。
齋藤薫さん
美容ジャーナリスト/エッセイスト
体温が見えるはずなどないのに、時々温度を感じさせる人がいます。何だかそばに行って、暖まりたいほどに温もりを感じる人と、そばにいるだけで、涼やかさを感じさせるような人が。
結論から言って、どちらもとても魅力的。温度を感じさせる人は、そもそもが見ているだけで心地よくなる印象美の持ち主だから。大前提として、美しいイメージを放っていなければ、暖かいにしろ、涼しげにしろ、温度感を放つはずがないからなのです。
もちろん、それは顔立ちや肉付き、髪型やファッションまで含めた総合的なイメージに他ならないけれど、温感イメージはその人がもともと持っている魅力の一つであると考えても良いのでしょう。
「クールビューティー」という言葉があるのもその証。文字通り、凛としたクールな印象を持つ人の美しさをそう名付けたわけで、それは一つの美の完成形として確立していることを物語ります。
ひょっとすると、「癒し系」と呼ばれる人たちは、ほっこり暖かいほうのイメージを持っているということかもしれません。
クールビューティーは、例えば“ベージュのワントーンメイク”が、メイクアップの世界で一つのスタイルを確立させているように、なりたいイメージとして演出ができるもの。だから、クールビューティーを目指す人は当然のこととして、髪型もタイトでスッキリ。ファッションもシンプルでクールな印象を放つ服を選んでいるのでしょう。つまり誰にでもクールビューティーを狙うことは可能だということ。
でもここではもっと単純に、パーツパーツにも涼しげで清々しい印象を放つ人の定義を考えてみました。
よく「目が涼しげ」という言い方をします。それは一体どういう目? すっきりとした切れ長だったりするかもしれないし、瞳が綺麗で、白目が青みを感じさせるほど澄み切った印象だったりするのかもしれません。
もっと感覚的に目もとそのものに透明感を感じる場合もあるでしょう。一言では定義できないけれど、そもそも目に涼しさや清々しさを見ることができるのは、目もとが水の印象を宿しているから。瞳がウルウルするといった表現をするように、粘膜が水感を持つからなのではないでしょうか。
もっとポエムな表現の中で、美しい目もとは比喩的に透き通った湖に例えられたりするけれど、それもまた同じように水感を持つからに他ならないのです。
その、水が透き通るような印象を放つほど、その人は涼しげな目の持ち主ということ。印象美にもきちんとした理論的な理由があるということなのです。
もっと広い意味で、涼しげな印象をもたらす人がいたとして、そう見える決め手はと言えば、やはり肌印象。「涼しげな目」と同様、肌がみずみずしく透き通るような印象をたたえていること。加えて、なめらかでキメ細かいこともまた、涼やかな質感印象にもつながっていくのです。
例えば陶器も、表面に上薬が塗られているような、艶やかでなめらかな質感のものは、触らずともひんやりした触り心地がイメージできます。磨かれたようななめらかな質感は、やはりクールな温度感を生まれながらに持っているということ。
服の素材でも同様、シルクやサテンのようになめらかで艶やかな質感のものは、触れる前から涼感イメージを放っているし、逆に起毛したようなボアやパイル地は、触る前から暖かい。実際にイメージだけでなく、触れた時の温度も見た目と同じ涼感と温感を宿しているのです。私たちはそれを「見て触れる」という体験でよく知っているから、見ただけでその温度感を図ることができるのかもしれません。
質感と温度感はそこまで密接な関係を持っていて、だからこそベースメイクでも同じように温度感を操ることができるのです。ふんわりした柔らかい肌は暖かく、整ったなめらかな肌は涼しさを感じさせる……そうした温度感の印象も含めて、肌の美しさが決まること、覚えていてほしいのです。
【格言】
温度を感じさせる人は、そもそもが見ているだけで心地よくなる印象美の持ち主。
大前提として、美しいイメージを放っていなければ
クールな温度感など放つはずがないから、それはひとえに美しさの証
公開日:2025年4月14日
齋藤薫さん
美容ジャーナリスト/エッセイスト