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情報が溢れている時代、モノ選びはますます難しくなっています。だから改めて、自分に合うモノ、自分が選ぶべきモノにどうやって行き着けるのか、本気で考えてみました。
齋藤薫さん
美容ジャーナリスト/エッセイスト
一昔前までは“良いモノを探す”のに、みんな一生懸命でした。有難いことに、今は世の中に良いモノがいっぱい。無いものが無いほど、どんなジャンルにも存分にモノが揃っています。ただ同時に、良いモノが多すぎて一体何がいいのか、もう簡単には「選べない」という新しい悩みが生まれているのも確か。そして、探し出すより選び出す方がむしろ難しいことを、今私たちは実感しているのです。
さらに言えば、モノが増えれば増えるほど情報も多くなり、その情報に振り回されることになる。今度は、どの情報を信じたらいいか? という情報の選択にも悩むような人が増えてくる……。
良いモノを探していた時よりずっと、自分自身がしっかりしないと情報の波に流されてしまう可能性も。だから今こそ情報に頼らず、自分自身を見極める時なのです。
そういう意味で、あなたは自分自身をよく知っているでしょうか。自分に合ったモノを選ぶべき……それはわかっているけれど、それこそ自分自身をよくよく知っておかないと、正しいモノ選びには応用できない。だから、まずは自分をよりよく知ることから始めたいのです。
こんなことが言われます。実は現代よりも昔の方が、みんな自分のことをよく知っていたのでは? どういうことかと言えば、情報がなければ自分で考えるしかないわけで、自分に何が必要か、何もないところから見極めていくしかなかった。それに比べて現代は、良い情報に溢れているからこそ、その情報に頼りきり、考えなくなってしまったという傾向にあるのです。
例えば昭和の時代、今のように可愛い服が溢れていないから、自分で作るしかないと思う人が多かったはず。実際、自分が着たい色と柄の生地を買って、型紙を使ってカットして、ミシンを使って自分だけの一着を縫い上げる、そういう人が少なくなかったのです。
その時、どうすれば自分に似合うものを作れるか、ある意味失敗しているゆとりはないからものすごく考えて考えて、だから、自分に合ったものを知る能力に長けていき、自分をより魅力的に見せてくれるものは何なのかを知っていったのです。
もちろん、そんな時代には絶対戻れないけれど、でも、自分には何が必要かを一から考える、その大切さをもう一度見直してみてほしいのです。欲しいものがすぐ手に入る今、便利になった分だけ、自分を知らないと間違いも無駄も多くなる。逆に自分をよく知るほどにふさわしいものに出会う。それ自体が幸せにつながること、早く気づいてほしいのです。
じゃあ自分を知るってどういうことなのでしょう?
例えば、服を作る時。なりたい自分と、自分にもし弱点があればそれをかけ合わせること。可愛く見えたい、でもふっくら見えがちだから、ほっそり見せたい。ポジティブな願望と自分が思う弱点の克服、2つの願いを組み合わせるのです。その結果、首元や胸元まではきちんとフィットしているけれど、裾に向かってゆったりとしたAラインを描く、テントシルエットのワンピース。これはきっと可愛いけれど、すっきり見えるはず。
そう、化粧品においても同じ。ツルツルの肌がほしい。でも私は毛穴が目立つから、毛穴にも効果的なものを。その2つの願望を組み合わせれば、必ず自分に最もふさわしい製品が見えてくるのです。
そういうふうに、ポジティブな願望とコンプレックス解消を掛け算にした時、たくさんのモノの中からきっと自分に合ったものに行き着く。その喜びはまた新しい輝きにつながります。自己紹介で、長所と短所を端的にあげると、良い出会いができるように。
自分を知るということは、幸せの第一歩。そうも言えるのではないでしょうか。
【格言】
ポジティブな願望と弱点の克服、
2つの願いを組み合わせると、自分に合うものに行き着ける
公開日:2025年6月16日
齋藤薫さん
美容ジャーナリスト/エッセイスト